教室は授業が始まる2分前になっても騒がしい。
学級委員長の梓が声をかけるけど収まらない。
「早く先生来ないかしら...」
「お疲れ、梓」
「あんたもちょっとは仕事してよ」
呑気な弥太郎をじろりと睨み、梓は前を向いた。
伊世 弥太郎(いせ やたろう)は私のもう一人の幼なじみの男の子。
かなりの長身で、145センチくらいしかない梓と並ぶとさらに大きく見える。
その微笑みは優しげでいかにも王子様って感じがする。
女子からも男子からも好かれる人気者だ。
頭はそんなに良くないけど運動が得意で、梓とはどんな意味でも凸凹コンビだ。
そんな微笑ましい二人を眺めながら、私は教科書を取り出す。
数字。苦手で、一番好きな教科。
ちら、と時計を横目にみる。
まだ来ないかな。まだかな。
そう思って視線を下ろしたのと同時に、教室の扉がガラガラと音をたてて開いた。
その瞬間、心臓が跳ね上がって全身の血液を沸騰させようと炙り出す。
「じゃ、始めまーす」
落ち着いた声。
すっとした切れ長の瞳。
通った鼻筋に薄い唇。
筋肉質の日焼けした体。
薬指に光る指輪。
私を初恋の思い出から連れ出してくれた、私の好きな人。
小野 佐吉(おの さきち)先生。
学級委員長の梓が声をかけるけど収まらない。
「早く先生来ないかしら...」
「お疲れ、梓」
「あんたもちょっとは仕事してよ」
呑気な弥太郎をじろりと睨み、梓は前を向いた。
伊世 弥太郎(いせ やたろう)は私のもう一人の幼なじみの男の子。
かなりの長身で、145センチくらいしかない梓と並ぶとさらに大きく見える。
その微笑みは優しげでいかにも王子様って感じがする。
女子からも男子からも好かれる人気者だ。
頭はそんなに良くないけど運動が得意で、梓とはどんな意味でも凸凹コンビだ。
そんな微笑ましい二人を眺めながら、私は教科書を取り出す。
数字。苦手で、一番好きな教科。
ちら、と時計を横目にみる。
まだ来ないかな。まだかな。
そう思って視線を下ろしたのと同時に、教室の扉がガラガラと音をたてて開いた。
その瞬間、心臓が跳ね上がって全身の血液を沸騰させようと炙り出す。
「じゃ、始めまーす」
落ち着いた声。
すっとした切れ長の瞳。
通った鼻筋に薄い唇。
筋肉質の日焼けした体。
薬指に光る指輪。
私を初恋の思い出から連れ出してくれた、私の好きな人。
小野 佐吉(おの さきち)先生。
