「え、もう切ったの?」

「仕事中だから。一応、一週間後には会えるかな」


それから一週間。
私の家にはマサフミ君のCDが届いた。

ジャケットは婚約指輪の写真。


「これ…」


私が欲しいと言った指輪だった。
歌詞カードを見る。
そこには私たちのことが書かれていた。


「え、何これ…」


ユウタに電話をすると直留守になってしまった。

その歌詞は、ユウタがしてくれた最初の約束で、ちゃんと守られているただ一つの約束だった。

まだマサフミ君の歌が流れている中、家のチャイムが鳴る。

出なくても、なんとなく分かった。
扉の向こうにはユウタが絶対に立っている。


「ユ、ウタ…?」


扉を開けると、そこにいたのはもちろんユウタで。


「恵子、結婚しよう」


それは今までにないくらいの大きなバラの花束と、CDのジャケットに移っている婚約指輪。


「電話もメールも、家に帰ることもちゃんとできるか分らない。だけど絶対に幸せにするから」



返事なんていらないよね?

だって、涙が溢れて声にならない。


なんでもない今日が、来年から私たちの最高の記念日になる。