これは、10年前の話。


「な、に…」


テントの中に布団を敷いて、
じゃれあっていたら、急に真顔になった彼。


「好き。俺、夏桜が大好き。」

「だ、からなに…」

「夏桜は?
俺のこと、どう思ってる??」


「同じだよ」

「同じじゃわかんない」


イジワルだ。
彼は時々、すごく意地悪だ。


「好き…です」

微笑んだかと思うと、
落ちてきた甘い口づけ。


「ヤダ…変態!やめろ!!」


服の中に入ってきた手を
必死に止める。

「大丈夫。力抜いて?
俺を信じて」

「やだよ。
こんなの初めてだから、、
どうすればいいか分かんない」

「俺だって初めて。
でも、だからこそ、
夏桜とがいいって思う。」

「うそ…」


だって、余裕あるじゃん。
慣れてる感じじゃん。


「本当。隠してるけど俺も
不安いっぱいだもん。
でも、もっと夏桜のこと知りたいから。」


力を緩めると、
彼の手がシャツを捲る。

「やっぱ、恥ずかし」

「大丈夫。俺に全部任せて?
気持ち悪かったり痛かったりしたら
すぐに言ってね」



それからは、
恥ずかしいのオンパレードだった。



「大ちゃん、怖いよ…」

「大丈夫。かわいいよ」

気づいたら裸の彼の手を
ただひたすらに握っていた。


「ありがとう、夏桜。
よく頑張りました」

私の隣に寝転がった彼が
頭を優しく撫でてくれて、
子供みたいに彼の腕の中で眠った。


これ以来、10年後の今日まで、
私は彼に会っていなかった。


なぜなら、


朝。

彼はお金と"仕事があるから"という
メッセージを残して去っていた。


おまけに帰ると、
かんかんに怒るお父さん。

何度もついたウソはとっくにバレていて、
泊まり込んだことで
彼と関わることさえ許されなくなった。


連絡先は消されて
連絡手段が絶たれ…

私達の関係は自然消滅した。