すると今度は基紀君が私の隣にやって来て。


「なあ、学年一位ってことは百点もあるの?」

「英語が百点だよ」

「マジで⁉︎ キショッ」

「きしょっ⁉︎」

頑張ったのにキショいって何だ! 私は基紀君をキッと睨み付ける。


すると。


「何話してるの?」

と背後から声がした。

振り返ると、そこにいたのは松岡さんだった。


松岡さんは、今日も相変わらず美人だ。
私と違って清楚な黒髪のストレートロングヘアーが、彼女が歩くたびにふわりと揺れる。
控え目ににこ、と笑う表情もとっても可愛い。


『何話してるの?』って、何気ない一言を掛けてくれたのも嬉しい。私にピンポイントに掛けた言葉じゃないだろうけど、私が答えても変じゃないよね?
だって松岡さんともっと仲良くなりたい。

あのハイキングの日から、彼女とたまに会話することはあるけど、LINEのIDはまだ知らないし、もっと距離を縮めたいと思ってる。


だけど私が答えるよりも先に基紀君が、

「テストの順位の話だよ! 春日、こんな不良な見た目して学年一位だって! ギャップ通り越して詐欺じゃね? キショくね?」

なんて失礼なことを言ってきた。


「え、竹入さん、一位だったの?」

「う、うん」

「松岡さんもマジびっくりだよねー。
あ、分かった。春日が金髪なのは、実は外人だからだ! 母国語が英語なんだ!」

「日本語ですっ」

軽く言い返すと、私のことを完全に舐めた様子で、私の髪をぐしゃぐしゃと掻き乱す。
今日、髪のセットにいつもより時間掛けてきたのに! やめろー!


「そう言えば松岡さんは何位だったの? 知的なイメージっていうか、頭良さそうだよね」

私の頭から手を離した基紀君が、松岡さんにそう尋ねる。
私も、乱れた髪を両手で何とか直しながら松岡さんの返事を待つけど。


「私は、大した順位じゃないから」


下を向いてそう答えた彼女は、そのまま廊下へ出て行った。


どうしたんだろう? 笑顔で話し掛けにきてくれたのに。


基紀君が「もしかして松岡さん、ああ見えて頭悪いのか?」と言っていたけど、隣にいた堀君が「松岡さんは中学でいつも上位だったから!」と反論していた。