切ない春も、君となら。


昼食後、予定通りの時刻から下山が始まった。

上りの時はほぼバラバラだった班だけど、下山では班員皆が一緒だった。


上りより下りの方が、やっぱり楽だ。

足の痛みも、昼食を食べている間に随分と楽になった。

近田君が『また肩貸すぞ』と言ってくれた時は、本当は心の中で〝是非お願いします!〟と思ったけど、これ以上密着したら恥ずかしさでどうにかなってしまうかもしれないと思い、遠慮した。



下山途中で、伊川さんが後ろから「ねぇねぇ」と私のジャージの裾を引っ張ってくる。
何? と振り向くと、彼女は小学生みたいな無邪気な笑顔でにこっと笑って。


「あのね、さっきは卵焼きありがとう!
金髪って、料理上手だし何か面白い人だね!
もし良かったら、金髪を杏のお友達にしてあげてもいいよ?」


私が何か答えるよりも先に、どこからか基紀君が現れ、後ろから伊川さんの頭に軽くチョップする。


「痛ーーいっ!」

「そんな上から目線の友達作りがあるか! 春日だって困ってんぞ!」


そう言われるけど、私は。


「ううん……っ」

「春日?」

「私も、伊川さんと友達になりたいっ!」


高校生になったら、今度こそ本当の友達を作りたいとずっと思ってた。

でも、誰でもいいって訳じゃない。

私は〝伊川さんと〟友達になりたい。


伊川さんは思ったことを何でもはっきり言うし、行動も突飛していて驚かされることがある。

近田君の話からすると、そういうところが原因で彼女もあまり友達がいないんだろうけど……私は、そういうところこそが彼女の魅力だと思う。

だって、私には出来ない。

思ってることをはっきり言うことも、周りの目を気にせずにいられることも。

だから私は、そんな伊川さんと友達になって、もっとたくさん話したい。