切ない春も、君となら。

「あれ? 総介達じゃん!」

二人も私達の方へとやって来て合流する。


聞けば、伊川さんが『珍しい虫がいっぱいいる!』と言ってコース外へ行ってしまい、それに付き合っていた基紀君と共に、そろそろコースへ戻ろうと話していたところだったらしい。


「ちょうど良かった。じゃあ皆で一緒に行こうよ」

堀君が伊川さんと基紀君ににそう言うと、


「いいよー。杏も基紀と二人きり飽きたしー」

「杏! 酷!」


二人がそんなやり取りをしてきて、思わず笑ってしまう。


更に。


「皆、お疲れ様」

数メートル先に、立ち止まって私達に声を掛けてくる女の子がいた。

それは、松岡さんだった。

堀君が途端に「松岡さん! どうしてここに⁉︎」と嬉しそうにテンションが上がる。


「ずっと他の友達と一緒だったんだけど……やっぱり基本は班行動って言われてるしね」


確かに、彼女の隣には他の女子達は誰もいない。一人でこっちまで戻ってきた様だ。

松岡さんは、基本は班行動という先生の言葉に従っているだけ。そうだと分かっているけど、こうして班全員が揃ったことが何だか嬉しく思えた。

少しだけ、皆にとっての〝友達〟に近付けたのかな? 私。


よし、もう少し頑張れば頂上のはず。
頑張ろう!


そう意気込んだ、その時。


「そう言えば春日、何で堀にリュック持たせてんだよ。パシリか? これだから不良は怖いわー」

と基紀君にニヤニヤしながら言われてしまう。