切ない春も、君となら。

「竹入さん」

急に、堀君に話し掛けられる。

彼が私のことを良く思っていないのは明白だったから、少し身体が強張ってしまうけど。


「足痛いんでしょ。俺が荷物持つよ」


彼が言ってきたのは、そんな意外な言葉で。


「え、え? い、いいよ、そんな、悪いし……」

だけど近田君が「いいから持ってもらえ。怪我人」と言ってきて。

どうしようかと思いながらもお言葉に甘えることにした……。


すると今度は近田君が。

「歩けるか? 肩貸すか?」

「へっ⁉︎」

か、肩を借りるだなんてそんな!
申し訳ないし、何より恥ずかしいし‼︎


「包帯巻いてもらったから大丈夫! 歩ける!」

私はそう言って、一人で歩き始める。

実際、足の痛みは本当に和らいでいたから無理なく歩けた。


でも、やっぱり肩を貸してもらえば良かったかな、なんてちょっと思ってしまった……のは何でだ⁉︎




「竹入さん、ごめんね」

突然、堀君が呟く様に私にそう言った。

え、何が⁉︎ 荷物持たせてる私が謝るなら分かるけど、何で堀君が私に謝る⁉︎


歩きながら彼は続ける。


「俺、中学の時からバスケ部だったんだけど、当時のクラスにちょっと不良っぽい人達がいてさ。
ある日、その人達と廊下でたまたまちょっと話してたら、俺も不良グループに入ったみたいな噂がどこからか流れて、大事な試合に出られなくなりそうになったことがあったんだ」

どこか遠い目をしながら、堀君が自分のことをそう語る。


「そういうことがあって、竹入さんともあんまりかかわりたくなかった。また誤解されたら嫌だから。まあ、同じ班になったのは俺がそう提案したからだけど……。
だからさっきも、竹入さんのことはわざと置いていこうとしたんだ。ごめん」

彼の言葉に、私はふるふると首を横に振る。


「そういう事情があったなら仕方ないよ。そうじゃなくても、こんな見た目の私が悪いんだもん」

そう言うと、堀君がふっと優しく笑い、


「竹入さんって本当、近田の言う通りの子だね」

と言った。