切ない春も、君となら。

「ど、どうしてここに?」

「基本は班行動!」

ぴしゃりとそう言い放つと、彼も私の正面に座り込む。

そして、私の右足にそっと両手を添える。


「へっ⁉︎」

突然のことに驚いて、変な声をあげてしまう。

すると彼は、私が巻いた包帯をするすると外していく。


「ただ巻くだけじゃ意味ねえんだよ。ちゃんとやってやる。俺、部活柄こういうの慣れてるから。
……ていうか足捻ったんならちゃんと言え、馬鹿」


そう言って、彼は慣れた手つきで包帯を巻き直してくれる。

彼の手が、時折私の足に直接触れる。

男の子に触れられることなんて今まで殆どなかったから、またしてもドキドキしてしまう……。

何より、こんな風に私を心配して手当てしてくれる男の子なんていたことなかったし……。

ドキドキしたって、おかしくないよね……?


よく見ると、彼の後ろには堀君もいた。
近田君を連れて先に行ったはずの彼だけど、今度は逆に近田君に引っ張られてここへ戻ってきたのだろうか。


ともあれ、近田君と二人きりじゃなかったことに気付き、ちょっと残念な様な、ちょっと安心した様な……変な気分になった。



「これでよし」

あっという間に彼は私の足に包帯を巻き終えた。

凄い。痛みがかなり和らいでる。普通に歩けそう。


「ゆっくり立てよ」

そう言いながら、彼は私に右手を差し出しながら立ち上がる。


つ、掴まってもいいってことかな?

掴まらないのも、変だよね?
なんて言い訳がましいことを思いながら、私はその手を握らせてもらい、ゆっくりと立ち上がった。

……初めて男の子の手、握っちゃった。