切ない春も、君となら。

ハイキングは好きじゃない。
アウトドアなこと自体が苦手だし、すぐ疲れてしまう。

でも、だからこそ友達と一緒に楽しく会話をしながらやりたかった。


って。そもそも友達じゃないし、そんな都合の良いことが出来る訳ないよね……。


あの二人だって、私じゃない人と登った方が楽しいだろう。


仕方ない。私は一人で登ってーー




「おい。遅れるぞ。早くしろよ」

「えっ⁉︎」


思わず、仰け反って驚いてしまった。


「何だよ、びっくりさせんなよ」

「そ、それは……っ」


それはこっちの台詞だよ! と言い掛けた。


だって、近田君が私を待っていてくれたから。


も、もしかして私と一緒に登りたいとか思ってくれてーー


「基本は班行動だっつったろ。堀も待ってるんだからボーッとしてねえでちゃんとしろよな」


ですよねー。近田君、不良が嫌いな凄く真面目な人だもんね。



……でも、〝見た目完全に不良〟な私とも一緒に行ってくれるんだ。

いくら基本は班行動と言っても、伊川さんと基紀君は先に行ってしまったし、松岡さんも他の班の子達と一緒だ。
私を置いて先に行くことだって出来たはずなのに。

……私は彼に対して、またドキッとしてしまった。

この間から変だな、私。
彼は私に気を遣ってくれてるだけなのに。
真面目だから班行動しようとしてるだけなのに。

それでも。


嬉しい。