切ない春も、君となら。


四月下旬。

空は真っ青で、吹き抜ける風が心地良い。


絶好のハイキング日和と言えるだろう。



まあ、体力ないし、これから山を登るの結構不安なんだけど。


でも、それ以上に。

きっと、友達を作るチャンスでもある!
特に、同じ班の子達!

今日の目標は、伊川さんと松岡さんと仲良くなること!


バスを降り、山の麓にクラスごとバラバラと集合しながら密かにそんな決意を立てていると、学年主任がメガホンを使ってこのハイキングについて説明し始める。


と言っても、詳細はこの間のホームルームで担任が話していた通り。

これから山を登り始め、頂上でお弁当を食べ、下山。


そして、基本は班行動。

班行動ということは、伊川さんと松岡さんと必然的に一緒になる。

頑張って積極的に話して、友達になるんだ!



そして、山登りがスタート。

私はまず、伊川さんを誘おうと彼女の姿を探すけど。


「基紀ーっ! 杏と一緒に行ってくれるよね! ね!」

「分かったからひっつくなって」


……あ。先に行ってしまった。
うーん、あの二人の間に入るのは難しそうだ。
仕方ない、伊川さんとは昼食の時にコミュニケーションを図ろう。


「ま、松岡さーー」


しかし、松岡さんも。



「菜々子、一緒に登ろー」

と、いつも松岡さんと一緒にいる仲良しグループの女子さん達が彼女に声を掛けてしまった。


「え? でも基本は班行動することって先生が言ってなかったっけ……」

と松岡さんは彼女達に言うけれど。


「基本は、でしょ? 菜々子の班、変な女の子しかいないから心配なんだよー」

「そうそう。伊川さんとか、あの金髪とか」


ここでも〝あの金髪〟呼ばわり!


その後、松岡さんは私と目が合うこともなく、女の子たちに連れて行かれてしもった。


私は今日もぼっちの様だ。