切ない春も、君となら。

予鈴が鳴り、次の授業の準備を始める為に皆、自分の席に戻っていく。


私も、自分の席に座って英語の教科書を出す。



「班決まったのに、何でそんな暗い顔してんだ」

隣の席から近田君にそんなことを言われる。


私、そんなに顔に出てたか。



「その……皆、私と同じ班になっちゃって申し訳ないなあって」


明らかに嫌がっていた伊川さんと松岡さんは勿論、堀君も私のことは良く思ってなさそうだし。


それに近田君だって。


気を遣って話し掛けてくれただけで、私と同じ班になろうという気はなかったと思う。

それなのに、あれよあれよという間に同じ班になってしまって申し訳ない。



すると彼は。



「……〝皆〟って何だよ」

「え?」


思わず目を丸くして彼をじっと見つめてしまう。


「他の奴がどう思ってるかは知らねえけど、少なくとも俺は、お前と同じ班で良かったけど」



……へ?




「……あっ、へ、変な意味じゃないからな⁉︎ 俺は基紀みたいに女子と話すのそんなに得意じゃないから、全然話したことない女子と同じ班になるよりはお前で良かったっていう意味だからな!」

「わ、分かっております!」


そう、分かってるよ。

近田君は厳しくて分かり辛いところもあるけど、本当は優しい人。
だから気を遣って私に話し掛けてくれてるんだよね。


分かってる、けど。


否定しながらも、そんな風に耳まで真っ赤に染めてるところ見てしまったら……。


ちょっとドキッとしてしまうじゃないですか。



何はともあれ、ハイキングの班決めは無事に終了した。