「……責任取れないならやめるなんて言わないでよ」



腕を解く直前、なるみにぼそっと文句を言われて思わず謝罪。

ずっと一部始終を見ていたクラスメイトたちに、「ようやく一途になる気になったのか」とまで言われた。俺はもともと一途だよ。



「っていうか、なるちゃん別れるなんて言ったの?」



「うん、カチンときたから言っちゃった」



「それで目黒反省したのかよ。

反省するのが遅ぇんだよお前は」



「でもそれで衣沙が一途になるなら、

なんかもう、さすが姐さんって感じだよねー」



別に別れを切り出されたわけじゃないのに。

何も知らないクラスメイトたちは「目黒衣沙を手懐けられるのって粟田なるみぐらいだよな」というなんとも失礼な話題で盛り上がる。




手懐けられてんじゃなくて、俺が懐いてんの。



「それで、関係全部切れたの?」



「……大学生とか、社会人とか。

会えてないけど文句言ってきそうな相手が何人か残ってる」



「……わたしが直接電話してあげようか」



「いや、いい……

ちゃんと自分で謝って終わらせるから」



ごめんと謝れば、なるみはふるふると首を横に振る。

連絡先を見てさすがに自分でも引いた。いくらなんでも遊びすぎた。関係を終わらせたら、なるみにスマホのメッセージをみられても困らない。



……あ、だめだ。

兄貴とかなるせとの会話を見られたら、俺の本音だだ洩れだから無理だ。それ以外はいいけど。