(けれど今、花音は私…自分を好きと言ってくれました。だから私は私に戻れたのです。)

(待って!私は「捨華」が好きなの!「自分」が好きなんじゃないよ!)

(同じ事です。あなたは誰かに自分の全てを愛され理解されなければ、生きていけない。私ならそれが出来る…花音自身なのだから。)

(…確かにそうかもね。そんな都合のいい人、自分自身しかいない。)

(あなたはもう、そんな他人を求めなくてもいい。私はあなたなのだから、あなたは自分一人で立っているのと同じ事です。)

(私もようやく人並み…って事…?)


私はホッとしたような寂しいような、微妙な気分だった。

(あんたが私で嬉しいよ。冷静で厳しくて優しい…そんな部分が私の中にもあったのなら。)

捨華はフワリと微笑んだ。その姿は頭の中に消えてしまいそうに、儚く透けていた。

…お別れ、なんだろうか。
私はわざと明るく聞いた。

(これで、私は一人でも大丈夫ってわかったんだし!捨華も花音に還るんだよね?)

私は伸びをして、涙目をごまかした。

(これで私も妄想少女卒業かあ…)

捨華は申し訳なさそうに、うつむいた。

(それが…無理です。)
(へ?)

(私が『捨華』となって数年…永すぎました。私は完全な別人格として育ちきってしまった。…もう、『花音』には戻れません。)

私は、ぽかんと口を開けた。

(…どういうこと?)
(つまり…)

捨華は、うやうやしく私の手を取った。

(これからもよろしく、という事です。)

捨華は、この上なく上機嫌で私を抱き寄せた。


(…待って!それじゃ私、ナルシストの二重人格って事になっちゃうじゃん!)

(今までずっとそうでしたよ。自覚出来て良かったですね♪)

(待…っ!ちょっと!嫌ぁぁぁ!)





そんな訳で、私の彼氏は今も私の脳内にいるのです…



end