放課後、途中の道で、めぐと別れる。「また明日」なんて言えない。明日は、めぐの友達の風邪が直ってるかも知れないから。
「バイバイ」と手を振って別れた。


一人で河原に降りる。座り込むと、隣に捨華が立った。
私は川面を見詰めたまま、話し掛けた。

(…捨華はさあ、ホントは私の事、嫌な奴だと思ってるでしょ。)

(ええ、思ってます。)
(…それでも?)
(そういう所が。)

捨華が、私の背中を抱き締める。私がそうされたいと思っているから。

(好きですよ。あなたの身勝手な所、卑屈な所、卑怯な所、自意識過剰な所…全部が。)
(なんで?)
(それがあなただから。)


私は河原で一人、涙を流した。
全部、許された。親友の意味を勘違いして、めぐに自分の気持ちを押し付けていた傲慢さも、一人になりたくなくて、嫌いな子と友達になるフリをしていた卑怯さも、あこがれる気持ちだけで部長の側をウロウロしてたバカさも…切り刻んで捨ててしまいたい自分を許してもらえた。


(ありがとう…捨華、大好き。)



捨華はにこりと笑って、掻き消えた。





違う。消えたのではなく、私の心の中にスルリと収まった。


捨華の想いが奔流のように、私の心に流れ込む。




教室でオドオドしている花音。めぐとその友達を見ないように気をつけている花音。部活で傷付けられて逃げるように帰る花音。

全部全部抱き締めたい。
「大丈夫だよ」と言ってあげたい。
世界で自分だけが花音を許してあげる。守ってあげる。
他に誰もいないのだから、私が。





(捨華…わかったよ、あんたの正体。)