いつもと変わらない朝だった。

鳴り響く目覚ましで起き、支度を終えて1階に向かう。食卓には朝食が並べてある。
新聞を読んでいるお父さん、食べかすをポロポロ落としている小学2年生の弟、食器を洗っているお母さん。

ごく普通の一般家庭で私は育った。

「お姉ちゃん、おはよー」
「うん」
「早く食べちゃいなさい」
「うん」
「どうだ?高校生活は楽しいか?」
「うん」

弟、父、母の順番で私は会話を済ました。
外には私のために待ってくれている友達、さあやがいた。
朝食を食べ終え、歯磨きを済ました私は家の外に出る。

「おはよ!」
「うん、おはよ」
「香澄と同じクラスでほんと良かったよぉ!友達いない高校lifeなんか送りたくないもん」
「これからだよ」
「そーかな?」

さあやは元気で笑顔が良く似合う。中学時代は男女から人気があった。さあやは高校でも友達たくさんできそうだな。
私はそんなことを思いながら駅までさあやと話した。
私が通ってるのは住吉高校という県の中で真ん中より下の高校。家から歩いて5分かかる駅から8駅ほど離れていて40分くらいかかる。

駅のホームについた。

「人多すぎでしょ」
私がそう言うと
「電車通学いやなんですけど。朝の駅はまじでやばい」

そんな会話をしていたときだった。

「あぁ?ふざけんなくそがっっ!」
「てめぇがふざけんなや、殺すぞ!」

大きな叫び声はホーム全体まで響いた。

「なに、喧嘩?」
「だれ?」
「どこ中の人なのー」
「男同士の喧嘩だってー」

周りの人の会話を盗み聞きしたさあやが私に
「喧嘩とか怖いねー」
「こんなとこですることじゃないでしょ。頭小学生なんじゃない?」
と鼻で笑いながら言った。
「はっ!言い過ぎ!」
さあやが私の発言に爆笑してたときに駅に電車がきた。

《扉が閉まります。ご注意ください》

少しずつ進む電車の窓から喧嘩をしていた少年達2人が駅員に取り押さえられていた。押さえられていたのは返り血をたくさん浴びていた印象深い茶髪の男の子だった。もう1人の男の子は顔からたくさん血が出て倒れていた。
「ねぇ香澄、あの制服住吉高校じゃない?」
「ん?」
「喧嘩してた男子の制服!うちの学校の人だよ多分!」
「そーなんだ」
「あんな野蛮な人と同じ高校とか嫌だなぁ」
「先輩かもしれないよ?関わらなければいいだけじゃん?」
「そっかー」

たわいない会話をしていると高校前の駅についた。学校に入り自分の教室、1年A組にさあやと向かった。

「あ、さあやと香澄だ!おはよー!」

同中の人が廊下を歩いていると声をかけてくれたり、手を振ってくれた。
教室に入り、1番後ろの窓際の席に座る。さあやは一番前の窓際から3番目の席だった。

《キーンコーンカーンコーン》

予鈴がなって席に座る。昨日、入学式でクラスがわかった。皆まだ慣れていたいせいかそわそわしているのがわかった。

「えー、入学して2日目になりますが、昨日は時間がなかったため自己紹介をしていなかったね。なのでこれか……」

先生の話を途中まで聞いていたが、外の景色のほうが気になり窓に目をやる。クラスの皆が出席番号順に自己紹介してるみたいだが、私は《鷲尾》という名字のおかげで順番が最後のためそれまで寝ていようと思い顔を伏せる。太陽の日光がよく当たりうとうとしていると……

ガラッ

教室のドアが空いた。

皆がざわざわし始めたので、私も起きドアのほうに目をやる。

見覚えのある茶髪だった。朝にホームで喧嘩してた人だ。さあやに目を向けると、さあやがうなずいていた。

「俺の席どこ?」
「山中蓮斗、お前の席はあそこだ。早く座れ」
先生がそう言いながら私の隣の席に指を向けた。今気づいたけど私の隣には誰もいなかった。あれ?昨日もいなかったけ?などと疑問に思うが、まぁいいかと思い、頬杖をつき窓に目を向けた。

「なぁ」
「…………」
「お前だよお前。窓ばっか見てんじゃねーよ」

私は自分に喋りかけられていると知らず、窓を見てたらキレ気味に言ってきた。

「なに?」
なるべく顔を合わせたくない私は前を向きながら答えた。
「今何してんの?」
「自己紹介」
「ふーん」
なにこいつ。もう1度窓に目を向けると今朝のホームでの光景が頭に浮かんだ。
私も……私もあんな風に喧嘩をしてみたい。
つまらない人生。刺激がほしい


「はい次は山中ー」
ガタッ
「えーと、城西中の山中蓮斗。とりあえずつまらない人生にしないよう刺激を作って高校生活楽しみたいです」

私の目が見開いた。

「おし、次は山田」

なんで、なんで私が思ってたことを……。
私が驚いて隣をずっとみていると、山中がこちらを振り向いていた。

「お前顔に書いてるよ」

山中の髪の毛は綺麗な茶色だった。サラサラで前髪が少し切れ長な目にかかっている。鼻筋が通っていて、少しカサカサの唇。

山中の不思議なくらい整ってる顔に見とれていると、私の瞳には山中の顔ではなく背中が写っていた。

「おい!山中どこにいく!」
「当ててみ。それで俺のこと見つけてみてよ、先生♡」
そういって教室のドアを開けっ放しにして出ていった

「ちょっとまじでやばい」
「かっこよすぎ」
「私のど真ん中だわ」

教室内では女子が騒いでいた
「お前らもう高校生だぞ。こんなことで騒ぐんじゃない!自己紹介続けろ!」
先生の怒鳴り声で自己紹介は再開され、最後まで終えたところでチャイムがなる。
「えー今日はこれで終わりだが、明日からは授業が始まる。切り替えて高校生活迎えるように。気をつけて帰れよー」

「香澄!」