「あれ?思い出し笑い?」

「え…?」

翔さんに指摘されて、恥ずかしくて顔が熱くなる。



「本当に仲が良いんだな。
あぁ、本当に残念だ。
優紀君か那月君が、沙也加をもらってくれたら嬉しかったのに。」

「もう、あなたったら、失礼なこと言わないの!」

「良いじゃないか、本当のことなんだから…」

当の沙也加さんと那月さんは、どこか気まずそうに微笑んでいた。
お父さんは、那月さん兄弟のことを気に入ってるみたいだ。
那月さんだって沙也加さんのことが嫌いなわけはないし、だったら、なぜ、沙也加さんと結婚しなかったんだろう?
那月さんのご両親も、相手が沙也加さんだったら絶対に反対なんてしないよね。
少なくとも、私なんかよりは絶対に良いと思うはず。
だって、私が沙也加さんに勝ってるものなんて何もないもの。



あ、いや、ひとつだけあった。
体が丈夫ってこと。
でも、そんなの、特にメリットにもならないと思うのだけど…



「沙也加は、あかねさんに負けたんだな。」

「そ、そんなこと、ありません!」

反射的に私は大きな声をあげていた。



「でも…那月君は、君を選んだ。」

「あなた、お止しになって。」

「私は、何をとっても沙也加さんの足元にも及びません。」

「じゃあ、なぜ、那月君は君を選んだんだ?」

お父さんの目が据わってる。
ちょっと酔っぱらってるみたいだ。
でも、きっと、お父さんの言ってることは本心だ。
もしかしたら、本音をぶちまけたくて、お酒を飲まれたのかもしれない。