「龍兎ー!美愛ー!ご飯よ!起きて!」

朝の始まりはいつもこう。

母さんの第一声で起き、隣にいるお兄ちゃんを起こす。

お兄ちゃんはとんでもなく寝起きが悪い。

毎朝起こす私の身にもなってほしい。

「お兄ちゃん!朝だよ!起きて!」

「んっ、ん?美愛?」

「そうだよ。お母さんが呼んでる。」

私はお兄ちゃんが起き上がるのを待たずに先に部屋を出た。

お兄ちゃんは自分の部屋があるにも関わらず、毎日私の部屋で寝ている。

だから、余っている布団が常に私の部屋に置いてあった。

「おはよう。美愛。顔洗っておいで。」

「おはよ。父さん、母さん。わかった。」

「ああ、おはよう。」

お父さんは基本無口で今も新聞を読みながら、コーヒーを飲んでいる。

父さんは昔、そんなに無口じゃなかったらしい。

何でも歴史に出てくる新選組の副長の生まれ変わりなんだそうだ。

母さんは鬼の一族だったらしい。

だから、私にもお兄ちゃんにも鬼の血が半分混ざっている。

母さんほどではないが、私にも治癒能力があるんだって。
でも、お母さんのように人を治すまでの力はない。

自分の怪我を治せるだけ。

私が顔を洗って歯磨きをしていると、洗面所にお兄ちゃんが入ってきた。

「やっと、起きてきたね。」

「おう。」

私はすばやく歯磨きを終わらせて自分の席に座った。

全員そろったところで、食べ始める。

「今日から高校生だな。」

父さんがポツリと言った。

「そうね。子どもが大きくなるのははやいわぁ。」

お母さんはしみじみと昔を思い出すように言った。

「今日の入学式、親はどうするの?」

「来なくていいからね。」

私がそう言うと、隣でお兄ちゃんが頷いていた。

「そう?」

「うん。」

「なにか勉強でわからないところがあったら教えてやるからな。」

お父さんは大学の先生をしている。

だから、今までわからないところは全部教えてもらってきた。

親が先生っていつでも教えてもらえるからいいね。

そんなことを考えながらゆっくり食べていると、

「美愛、早く食べねぇと遅刻するぞ。」

お兄ちゃんはそう言って食べ終えたお皿を下げていた。

「もうそんな時間?」

急がなきゃ。

私は残っていたご飯を口に詰め込んで自分の部屋に着替えをしにいく。