お母さんとの電話を切ってすぐにみんながお兄ちゃんを連れてきてくれた。

お兄ちゃんは傷が痛むようで少し呻いていた。

お兄ちゃんの傷はそこまで深くなかったけど、血が止まらない。どれだけタオルで止血しても止まらない。

「ねえみんな、お兄ちゃんに何があったの?」

私の問いに今度はジョンくんが答えてくれた。

「凶蛇の総長をあと一歩で倒せるというところまで行ったんだけど、その後ろから突然男の人が現れたんだ。
龍兎がその人を見た途端、おじさんって言って走り出してしまったんだ。」

おじさん?もしかして…

「あまりにも一瞬で僕たちには何が起きたのかよくわからなかった。
飛び出して行ったはずの龍兎は次の瞬間にはその男の人の前に倒れてた。
その男の人はみんなが龍兎を見たあとにはすでにいなくなってた。」

こんなことができるおじさんって...やっぱり荵さんしかいない。

気付いたら幹部室を飛び出していた。

荵さん。私達のおじさん。私の大切なお兄ちゃんを傷つけるなんて。
私が行ったところで何にもならないかもしれないけど絶対に許さない。

私の心は荵さんへの復讐心で黒く染まっていた。