「そう言ってくれたのは優衣だけだよ。」
私は声を出して泣いた。
優衣はそんな私の肩を抱いて一緒に泣いてくれた。
「大変だったんだね。私が抱えてたものよりもずっと。思う存分泣いていいよ。」
優衣は優しい言葉をたくさんかけてくれた。
このことがあってから私たち兄妹と優衣の距離は特別近くなった。
あのあと一時間近く泣いて二人とも目を腫らして総長室から出たときにみんなからどうしたのかと質問攻めされてしまった。
そんな光景を見てから、優衣はどんどん海虎になじんでいった。
ある日、女嫌いだったはずの靖人くんが自分から優衣を誘って外に出かけていった。
きっと、靖人くんなりに近づこうとしてるんだと思う。
2人は大きい紙袋を抱えて帰ってきた。
「おかえり、二人ともそんな大荷物を抱えてどうしたの?」
「おう、ただいま。俺たちは暴走族だけど人様に迷惑をかけたくないから特攻服を作ってないだろ?だから二人で海虎全員のピアスをオーダーメイドで作ってもらったんだ。なにか統一性のある俺らだけの証が欲しかったからな。といっても全部龍兎の指示なんだけどな。みんなここに来たら下に集まってくれって言っといてくれ。俺は下の連中に全員そろうまで外へ出ないでくれって言ってくるから。」
珍しく単語以外で話した靖人くんは電話をかけながら一階へ降りていった。
「優衣、靖人くんどうだった?」
「どうだったって?普通に話したよ。靖人くんって面白いね。」
「よかった。」
「何がよかったの?」
「優衣は知らないっけ。靖人くんは極度の女嫌いなの。近付くだけでも呼吸困難になるくらいの。」
「そうだったの?ぜんぜん大丈夫だったよ。」
私はその言葉を聞いて安心した。
靖人くんが倒れるどころか、優衣と仲良くしゃべれたみたいで。

