言葉を遮って一方的に伝えると私は踵を返し、その場を後にした。
彼が追いかけてこなくて、ホッとすると同時に寂しさが襲う。

強く掴まれた腕。さすると、うっすら赤くなっていた。
それから、私は自分の唇に触れる。じんわりと熱を持っているように感じた。

意味、わかんない。

丸山さんには花さんがいるくせに。
私がお店に来ないから? だから何だって言うんだ。
私より花さんを選ぶのに。どうしてキスなんてしたんだ。


好きだとも言われていない。それに、彼は私より花さんを平気で選ぶ。


“んー……花?”


寝ぼけて呟いた彼の声が耳にこびりついている。それは思った以上にショックだったようで、今更涙が溢れて止まらない。
辺りはうっすらと空が白んでいた。