「……おやすみ」


ぽつりと彼が呟いた後、すぐに頭上で聞こえる寝息。何が起こったのか、私は現状が把握出来ずにいた。
え、今私抱き締められている? 背中や、目の前に感じる彼の体温。早鐘のように鳴る心臓。ドキドキしすぎて爆発しそうだった。

動こうにもがっちりとホールドされていて身動きが取れない。


「丸山さん丸山さん」

小声で何度か彼を呼ぶが、思った以上に深く眠っているのかうんともすんとも言わない。


「……バカ」


丸山さんは本当にこっちの気持ちを知らないで。恨みをこめてそう小さく独白した私は諦めて目を閉じることにした。
彼の温もりもあって、私はすぐに意識を手放した。



先に目を覚ましたのは私だった。
「ん」と寝返りを打ちながら、うっすらと目を開けた私は見たことがない景色にびっくりして起き上がった。


そして、隣で規則正しく寝息を立てている丸山さんを見て段々と意識がクリアになっていく。
丸山さんからいつ解放されたのかわからないが、もう抱き締められていなかった。

ほっとしながら、私は彼を見下ろす。無邪気に眠る彼に、自然と口角が上がっていた。


「ん……」

目を覚ましたのだろうか。