「丸山さん、部屋何号室ですか」
「ん~、さんまるさん」
「三〇三号室ですね。わかりました」
エレベーターに乗ると、私は三のボタンを押す。丸山さんは壁にもたれかかりながらも眠そうにしている。
三階に着き部屋の前まで到着した私は「丸山さん、鍵どこですか」と尋ねる。
「……ポケット」
彼が取り出すことはない。小さく息をつきながら私は心の中で謝罪をしながら彼のポケットを探って鍵を取り出すと、扉を開けた。
真っ暗な室内。心臓がどくりと波打つ。急に緊張してきた。
勢いとはいえ、彼の部屋に上がり込んでいるんだ。
かちゃりと鍵を下駄箱の上に置く。それから鍵を閉めると、私は部屋へと入った。
1LDKの丸山さんの部屋。暗がりの中部屋の奥にあったベッドの上に丸山さんを寝かせると、私はふうっと一息つく。
それから部屋を見渡した。脱いだ洋服とかそのままで、少しだけ散らかっていて、それも男の部屋っぽい。棚にはコーヒーの本と小説で埋まっていて、本当に好きなんだなって笑みが零れた。
「ん……」
私の存在に気付いたのか薄っすらと丸山さんが目を開けた。
「……誰? ……のぞむ?」
私は彼の隣にしゃがむと、「小野寺です」と答えた。
「おの、でらさん? 嘘。そっか、これ夢か」
そう言うとぐいっと彼が突然私の腕を引っ張った。ぐらりと反転する視界。
私はすっぽりと彼の腕の中におさまっていた。


