「え、どうかしましたか」
何か私、おかしなことした? 何もしていないよね? ただ食べようとしただけだよね?
ハテナマークがいくつも浮かびながら、丸山さんに凝視されている理由をいくつも考えたけれどわからない。
「いや、えらいなって」
「えらい……ですか?」
「うん」
何がえらいのか答えないまま、彼も手を合わせて「いただきます」と言って麺をすすり始めた。
「ん、美味しい。やっぱ最高。小野寺さんも食べないんですか」
「え、あ、はい、食べます」
結局理由はわからなかったけれど、久しぶりのラーメンが美味し過ぎてそんなことはすぐにどこかへいってしまった。
「美味しかったですね」
「そうですね。あの、ご馳走になってよかったのでしょうか」
そう問いかける私。会計の時、丸山さんが私が出すより先に二人分支払ってしまったのだ。
奢られる形で店を後にする私。
その質問に丸山さんは優しく笑って頷いた。
「もちろんです」
「ありがとうございます、ご馳走さまです」
「どういたしまして。それじゃあ、明日また」
「はい。また明日」
笑顔で手をあげる彼に私も笑顔で返す。
踵を返し、一歩踏み出した私は胸のときめきが止まらなかった。
ただの常連の私にも優しくて紳士的で、出会った時よりももっと好きになっている。


