「でも、最近はラーメン好きな女の子多くないですか?」
「そうなんですか? それとも俺が出会わないだけかな」
腕を組んで首を捻る丸山さん。こんな素敵な人とデートへ行くってなったのなら、確かにラーメン屋は絶対に選ばない。
どこかオシャレなところを探してしまうのだろうな。ただ、丸山さんに連れていってもらったのならホッとするかもしれない。
こういう気の抜ける場所を選んでくれるんだって。
「こないだ望、……あ、俺のツレなんですけど、そいつの紹介で女の子とご飯行ったんですよ」
「えっ」
思った以上に大きな声が出てしまい、ハッとして口を噤む。だけど、彼はあまり気にしていみたいで続けた。
「行きつけのうまい定食屋連れて行ったら、ドン引きされちゃって。お店に入る前にさよならされて、なんか女の子って大変だなあって」
嘆くようにしみじみと言う丸山さん。
その結果によかったと思うべきなのか、少し複雑なところではあるけれど。丸山さんと何もなくてよかったってのは純粋な気持ちだ。
何もしないと、誰かに連れ去られてしまうんだ。こんな魅力的な人なんだ。
考えたことなかったけれど、私以外にも丸山さん目当てで通っている人がいるかもしれないんだ。
誰かのモノになってしまったら、もう諦める以外ないのに。告白する前に泣くのだけは嫌だ。
そう考えたら、いてもたってもいられなくて私は思い切って彼に伝えていた。
「……こ、今度、その定食屋さん行ってみたいです!」
これが今の私の精一杯。だけど、最大限に勇気を振り絞ったんだ。
一世一代の食事の誘いに、丸山さんはキョトンとした顔を見せた後、あっさりと
「いいですよ」
と、言った。
あまりにもすんなりと承諾してもらったから、嘘ではないかと目を瞬かせて彼を見る。だから、反応するのがかなり遅くなった。


