「小野寺さん、何にしますか?」
「あ、えっと、私は味噌ラーメンおおも……」
そこまで言いかけて私はハッとした。味噌ラーメン大盛り、にんにく増し増し……なんて言えるわけない。
誰にも会わずに帰るからにんにく増し増しが出来るのだ。大好きな人といるのにそんなこと出来るわけがない。
「味噌ラーメンで、お願いします」
「やっぱ味噌ですよね。俺も」
すぐに店員を呼ぶと、彼は私の分も一緒に注文してくれた。
丸山さんは水を飲んだ後、思い出したかのようにクスクスと笑う。何がおかしいのかと思い彼を見やると、私の視線に気付いた彼が口を開く。
「ああ、すみません。毎日俺の店に来てくれているから、こんなラーメン屋さんに一人で来ていると思わなくて。あ、こんなって言っちゃ失礼ですね」
「ラーメン屋来るように見えないですか?」
「見えないですね」
間髪いれずに彼がはっきりとした口調で言った。
「てっきりディナーはイタリアンとか、そんなのかと思っていました。すみません」
そう言って頭を下げられたら何も言い返せない。
「俺、ラーメン食べる女の子好きです、好きなので付き合ってもらいたいし」
「……」
私個人を好きだと言っているわけじゃないのに、好きだって言われたみたいでカッと顔が熱くなる。
そんな自分を悟られないように私は前を向いたまま、話し始めた。


