「あ、でも今は全くそんな感情ないですからね?」
「そうなの?」
「ないですね。先輩としてはめっちゃ好きですよ、けど恋愛感情はないです」
「そっか、確かに律ちゃんと彼氏のラブラブっぷり見てたらそんな気もなくなるか」
「そうですね。ただのバカップルだと思います」
沖くんは眉を下げながら、溜め息を吐くように言った後「あ、褒め言葉ですよ」と付け加える。
「それは言ってもいいと思うよ、バカップルって自覚あると思うから」
「うるさい沖!って言われる未来しか浮かびません」
「私も浮かんだ」
そうやって話ししながら職場に戻ると、既にデスクに戻っていた律ちゃんがじーっとこっちを見つめている。
何かを言いたそうだ。レインでの出来事を聞きたいのだろう。容易に想像出来る。
だから、私はゆっくりと椅子を動かして律ちゃんに近付いた。
「作戦成功」
他の人に聞こえない様にぼそりと言うと、律ちゃんは目をぱちぱちとさせる。
「えっ、話せたってこと?」
私の目を真っ直ぐに見てから、小声で聞き返す律ちゃんに私は静かに大きく頷いた。
その瞬間、ガバっと抱き締められる。
「り、律ちゃん!?」


