「繊細からかけ離れた人なら知ってますけど」


沖くんが頬杖をつきながらぼそっと言うから、私は思わず

「それって律ちゃんのことじゃないよね?」

と聞き返していた。じーっと彼を見つめるとバツが悪そうに肩を竦め、舌をぺろっと出した。


「バレましたか。内緒にしてくださいね。俺がこんなこと言ったって知ったら怒られる」

「目をつり上げて怒る律ちゃんの顔が浮かぶね」

「うわ、本当にやめてくださいよ?」

「どうだかね~」


余計なことばかり聞く沖くんに心臓がいくつあっても足りない。だから、これはそんな沖くんへのほんの仕返し。
沖くんはあわあわとしていて、騒がしい。
それに私は声を出して笑った。


「いや、でも本当に美味しかった~」

「気に入ってもらえたなら何より」

「またお店にぜひ来て下さいね」


オーナーはそう言って、優しく微笑んだ。
会計をしてレインを後にすると、沖くんが開口一番。


「めっちゃイケメンじゃないですか」


と、言った。
それに私はぎょっとして目を真ん丸にする。


「なんすか、あの大人の余裕。俺にも優しくスマートに対応してくれて、料理も美味いし。
あんなん惚れますよ。俺だって惚れます。イケメン過ぎて驚きました」

「そ、そうかな」


矢継ぎ早に言われて、私は若干顔を引きつらせながら答えた。