「お願いなんで、変な勘違いしないでください。まじで」

「沖が変な言い方するから」


本当に驚いたから、その律ちゃんの言葉には私も概ね同意する。


「してません。あ、小野寺さん。今度俺のこと、そのカフェに連れてってくださいよ」

「それは、……うん、どうしよう」

「ほら、俺コミュニケーション取るのうまいじゃないですか。人見知りしないし」

「そうだけど」


沖くんは先輩とも後輩とも、取引先の相手とすらすぐに仲良くなれるのだ。
人見知りしないからといって、空気が読めないとかではなく、きちんと場の空気を読んで発言しているし、なにより気遣いが出来る。
相手の嫌がることは言わない。そんなの当たり前のことなのだろうけど、それがどうしてなかなか難しい。


「俺を連れてったらそこのオーナーと話せるかもしれないですよ?」


思わず私は無言になった。
頭の中で天秤にかけてしまった。

沖くんを連れていって、話せるチャンスを上げるのか。
それとも一人で話しかけるのか。


……考えなくても、悩まなくてもわかる。圧倒的に沖くんを連れていくが勝っている。
話しかける勇気があったら、とっくに行動に移しているから。