「緊張してる?」

「……してます。丸山さんは余裕そうですね」

「はは、小野寺さん可愛い」

「っ!?」

むすっとした私にそんなことを言ってくる丸山さんに、さっきからやられっぱなしだ。こっちはドキドキしすぎて心臓がどうにかなりそうだっていうのに。


「お腹空いてますよね? 何か簡単に作るんで食材買っていきましょう」

私たちは色々と話をしながら、丸山さんの家の最寄りのスーパーに寄って食材を買い込んだ。
どうやら丸山さんは家でちゃんと自炊をしているらしい。

「俺、結構料理したりするの好きなんですよね」

「そうなんですね。私まちまちですかね、毎日は面倒くささが勝っちゃって」

「いいんじゃないですか。俺が作ればいいし」

「丸山さんの作る料理、楽しみです」

「腕によりをかけて作っちゃいますよーっと」

そう言いながら見覚えのあるマンションに到着して、私は彼に連れられながらエレベーターまで向かう。
どうしたってエレベーターでキスをされたことを思い出してしまって、私は俯きがちに乗り込んだ。

乗り込むと丸山さんが三階のボタンを押す。

「……あ、小野寺さん」

「え」

名前を呼ばれて反射的に顔を上げると、丸山さんの顔が近付き、ちゅっと唇に一度触れた。
一気に顔が熱くなる。

ゆるりと口角を上げる丸山さんは、三階に着いてさっさと降りてしまうから私は真っ赤になりながら抗議した。