―――どうにか駅にたどり着いた私は始発に乗って、帰路につく。
車内は人がまばら。誰もぼろぼろの私なんか気に留めることはない。


ふらふらとやっとのことで自宅についた私はベッドの上に倒れ込むと、またじわりと涙が滲んできてわんわんと声をあげて泣いた。
もう、ぐちゃぐちゃだった。


連休前で本当によかった。明日も休みでよかった。
どんなに目が腫れたって家から出なければ誰にも見せずに済む。


大嫌いだって思えたらどんなによかっただろう。
会ったらやっぱり好きで、どうしようもない。
最初は見ているだけでよかった。お店に通って、彼が作るコーヒーとサンドウィッチを食べて満たされていた。

なのに、名前を呼んでもらって、話すようになって、連絡先を交換して、彼を知っていって知らず知らずのうちにどんどんとその魅力にハマっていった。


一度は諦めようとしたのに、彼が……会いたかったなんて言うから。
酔っていたのも手伝ったかもしれないけれど、そのおかげでちょっとだけ勇気が出たんだ。

もしもあの時、彼から好きだとか愛の言葉が一つでもあれば信じることが出来たかもしれない。
花さんと呼んだことだって、着信だって受け流せたかもしれない。

でも、何もなかった。結局私と彼はオーナーと客という関係から抜けることが出来ない。


泣きすぎて疲れてしまったのか、私はいつの間にか眠っていた。
起き上がると頭がガンガンと痛む。


キッチンに行き水をコップに入れると、それをごくごくと飲み干した。
部屋にかけてある時計を見る。時刻は午後二時を回ったところだった。