オオカミ社長は恋で乱れる

「別にはしゃいでなどいない」

「この遊具の組み立てに何日掛かりましたか?」

自分の問いに眉間に皺を寄せながら少し上を向いて考える社長。

そして何でもないかの様に「3日だな」と答えた。

疲れた体で短時間かもしれないけど、深夜3日掛けてこれらの遊具の準備をする。

今日だって最初言っていたお迎えの時間を少し伸ばして欲しいと連絡してきたのは、きっと今日の午後一度帰宅してからこのオモチャの準備の続きをしていたのかもしれないと思った。

清水さんへだけでなく、子供達へどれだけの愛情を持ってるかを知る。

皆に恐れられたオオカミは、これ程まで深い愛情を持ち合わせていたのだと再度思い知らされた1日となった。

最初に社長が一人でお子様達の面倒を見ると聞いた時は何の冗談かと思い、どうするのかと心配したものだが、この部屋と社長とお子様達を見れば、自分の心配など杞憂だったと知る。

「なあ、佐賀」

問うように呼ばれて意識を社長に戻すとその視線は遊具で遊ぶ子供達へ向けられ、普段見られないニヤついた表情を見せてくる。

「悠も凛も可愛いよな」

「ええ、本当に。とても素直で可愛らしいですね」

「そうだろう?最近よく思うのだが、2人共本当は俺の子なんじゃないか?ってな」

「残念ながらそれは無いと思いますが」

そう即答したとこで舌打ちされ睨まれた。

そのような突飛でもない事を言われれば、こちらだって呆れてしまう。

流石にそれは痛い発想だ。

申し訳ないながらも思ってしまった。

でもそれ位3人のことを本気で愛されているのだろう。

気を取り直して「悠さんも凛さんも社長になつかれていらっしゃいますね」と伝えると、社長もお2人を眺めながら笑みをたたえた。

「悠はいろんな物に興味を持ち、学習能力も高いように思う」

「素晴らしいことですね。将来有望ではないですか?」

「ああ、そうだといいな。それに凛は絵莉に似て可愛い。愛嬌もあって常に俺に甘えてくれる」

「そうですね。将来とても美人になられるんじゃないですか?いろんな人から好意を持たれたら、社長も心配になられるでしょうね?」

「・・何?」

自分の言葉に社長の表情が変わる。

「・・・お前、もう帰れ」

明らかに不機嫌になった社長。

「このチョコやるから」

そう言って豪華にラッピングされた箱をグイグイと押し付けてくる。

その力で部屋から出ていけとばかりに自分を押してくる。

まだ我が娘でもない凛さんの未来を想像して、嫉妬を露わにする社長に苦笑してしまう。

チョコはしっかりと受け取ってキッチンから出て清水さんに「それではおじゃま致しました」と声を掛けるとキョトンとした顔をされた。

「えっ、佐賀さん・・コーヒー飲んでいかれないんですか?」

「はい、お土産にたいそうなチョコレートを頂きましたので、帰ってゆっくりと頂きたいと思います。それでは失礼致します」

戸惑う清水さんに一礼をし部屋を出て玄関で靴を履いていると、社長が「今日は本当にありがとう。休日なのに悪かったな」と白い封筒を差し出してきた。

今日の謝礼ということだ。
 
社長は仕事以外の私用で物事を頼む時は、こうしてお礼を述べて謝礼を渡してくる。

そういう事にきっちりしている人だ。

それに先程はあんなぞんざいな渡し方だったけど、高級チョコを頂いた。

それだけで自分としては充分なのだが、こうやって玄関先まで来て渡してくれるその気持ちをありがたく思い、お礼を伝えて受け取って帰った。