オオカミ社長は恋で乱れる

「オオカミ社長です」

「オオカミ社長?」

意外な答えに、声のトーンも上がってマヌケな声色が出てしまった。

「はい、そうなんです」

「オオカミ・・・」

オオカミってあのオオカミだよね。

あの動物の狼を頭に浮かべると、佐賀さんは察知したようで「その狼です」と言う。

オオカミ・・社長。

狼とオオカミ社長と言われる西条さんを想像していると、何だか笑えてきた。

「ふふっ」

その笑い声に佐賀さんが反応する。

「どうです?意外ですか?」

「いいえ、何かしっくりきます。今でこそとても優しい人って思いますけど、初めてお会いした時は何て言うか・・・凄い圧を感じたと言うか・・」

そんな私の返事に佐賀さんはクスクス笑って返して来る。

「そうですね。その通りだと思います。社長に会われたどの方もそう感じるでしょうね」

「やっぱり・・・」

「ですが清水さんに初めて会った時の社長の対応は誰にもされた事の無いものでした」

「えっ?」

みんなが同じ第一印象を感じているのに、西条さんの私への対応は違う?その意味は分からない。

どういうことか知りたくて、前屈みになりながらその先を尋ねた。

「違うって、どんな風に違ったのですか?」

「そうですね・・・。社長はあの通り威風堂々とされている方です。女性に対しても簡単に近寄れる空気を作りません。それは周りが心配するほどに」

「そうなんですか?」

「はい。でも清水さんに対しては全く違いました。清水さんにお会いしたあの瞬間、社長は落ちてしまったのでしょう」

「えっ?どこに?」

「恋に」

「・・・・・」

恋に?・・・落ちる?

佐賀さんの言葉にポカーンとしてしまった私の耳にクスクス笑う声が聞こえる。