オオカミ社長は恋で乱れる

何でもないことのように答えた優貴を見て佐賀は感じた。

  ーここまで本気だとは・・・ー

今まで何度となく驚かされてきたけど、これ程驚く事はなかった。

さすがにもうこれ以上問うこともできない。

「社長のお気持ちは承知しました」

ただ一言出た言葉。

前に向き直り、脳内の思考に覆われた。

 ー社長が子守り?・・・仕事をキャンセルしてまで一人で子守り?ー

 ー西条優貴という孤高の男、オオカミ社長と名高い我が社のトップがシッターを喜んでするだなんて・・・そんなこと誰が想像できるんだ?ー

グルグルと頭を巡る信じられない事の顛末に、今後を憂いてた佐賀は優貴から話しかけられても気付かなかった。

「なあ・・」

「・・・・・」

「・・・おい」

「・・・・・」

「佐賀!」

「っはい!」

「どうしたんだ」

「いえっ、失礼致しました。何かありましたか?」

いつもなら西条の言葉には即反応していたのに、『社長が子守り』ということがあまりに衝撃的で、こんなに近距離にいるのに聞き逃してしまった。

すぐに姿勢を正して聞き返すと、西条はたいして気にしていないようで「ああ、来週の土曜のことなんだが・・」と返してきた。

「はい、何でしょうか」

「ああ、プライベートなことで悪いのだが絵莉を同窓会の会場まで送り迎えして貰えないだろうか?」

「はあ・・・」

「俺が行くべきだろうが、会場に着いて子供達が絵莉と離れるのをグズったりしたら絵莉が困るだろうから。多分大丈夫だと思うけど、まあ・・万が一のことを考えてだ」

「・・・そうですか。承知致しました」

「すまないな、申し訳ないが頼む」

そう言うと佐賀に頭を下げた。

 ー社長が私に頭を下げるなんて!ー

目の前の光景に佐賀は目を見開いて驚いた。

そんな西条を見たことがなかったから。

頭を下げることに躊躇もなく、穏やかな表情を見せて頼んで見せた。

 ーこんなに人は変わるものなのか?ー

「はい、承知致しました」

まるで棒読みのように、そう返事することしか今の佐賀はできなかった。