オオカミ社長は恋で乱れる

通話の切れたスマートフォンを耳に寄せたまましばし停止する。

『遠慮する必要はないな』って何だ?

心配する人がいないってことにかな?

確かに私が事故を起こして報告する人も、心配する人もいない。

それに怪我の様子を見に来るって・・。

『心配だった』って、そんなこと言ってくれるんだ・・・。

あんなに気難しそうな見た目なのに、優しいんだなとつい感心してしまう。

秘書の佐賀さんが社長さんは会議があるって言っていたけど、もう終わったのかな。

そう思い出しながらスマートフォンをテーブルに置き、玄関の灯りを点けに行った。

その時姿見に映る自分を見てハッとする。

パジャマ代わりのラフな部屋着だ。

さすがにこれはマズイだろう、人を迎える格好じゃないと急に焦りだし、とりあえず手前に掛けてあったロングワンピースに着替えた。

これだって安物だ。

でもさっきのTシャツ・短パンよりはましだろう。

落ち着かない気持ちでキッチンをウロウロしていると、『ピンポーン』と本日2度目のインターホンが鳴って、パタパタと小走りで玄関に向かった。