オオカミ社長は恋で乱れる

「こんな立派な自転車頂けません!私はあの自転車で充分なんです。本当にボロボロで恥ずかしいですけど・・」

言いながらも羞恥心にうつむいてしまう。

すると佐賀さんは私に気遣うように言葉を選んで言ってきた。

「こちらこそ押し付けるような事をしてしまい申し訳ありません。普段お使いの自転車の方が慣れていてよろしいと思うのですが・・何分うちの社長が心配されてまして。このまま持ち帰っても社長は了承せずまたお持ちすることになるので、もしお嫌でなければお使い頂けないでしょうか?私も詳しくないので、業者の方にも使用方法を説明しに来て頂いて待機していますので」

「あの、でも・・」

「もし使い難いようでしたら、また違うものをご用意させて頂きます」

言葉はソフトなのに、なかなか押しは強い。

業者の人も来て側にいると言われたら、私もそれ以上断りきれずに説明を聞いてしまった。

試乗してみればあまりの乗り心地の良さ、安定感に感動してしまった。

電動アシストって凄い!

スイスイ進む楽さに、嬉しくて心が動いてしまった。

「凄いです!」

その一言に佐賀さんが微笑み、その顔を見てハッとする。

やだ、私ったら。つい興奮してしまった。

すると佐賀さんが「気に入って頂けたようでよかったです。安心致しました。それでは登録の手続きを致しましょう」と間をおかずに業者さんに声をかけた。

「あの・・でも・・・」

困惑する私は、渡された書類への記入がなかなか出来ずにいた。

すると横に立つ佐賀さんが諭すように語りかけてきた。

「勝手な事をしてご迷惑だと思うのですが、今回のことは事故としてどうしても車側が責任を問われますので、示談としての形で受け取って頂けたら幸いだとこちらは思っております」

「そんな・・悪いのは私ですから」

「この自転車については社長の指示なので、私は従わなければなりません。どうか受け取って頂けないでしょうか」

そう言われてしまうと、それ以上断ることができなかった。

申し訳ない気持ちでお礼を伝えた。