オオカミ社長は恋で乱れる

その日の午後、佐賀の元にとある出版社から社長宛てに取り急ぎ重要な問い合わせが来たと連絡が入った。

ー来たかー

電話に出てみると週刊誌の記者と名乗った相手から、SNSで社長が騒ぎになっていることについて事実確認を求められた。

隠し子騒動。

保育園の運動会で男女の幼児と走る姿。

抱き上げたり、手を繋いだり、女性に寄り添う姿の画像や動画について。

「女性やお子さん達とはどのような関係ですか?」「ご結婚されたのですか?」「伺った所によりますと、その女性やお子様達は西条社長とは苗字が違うようですが・・・やはり隠し子ということでしょうか?」

次々と矢継ぎ早に質問されたが、一つ一つには答えず、社長から指示されていた言葉を返した。

「その件に関しましては、秘書である私から答える事はできません。社長自ら皆様にご報告させて頂く予定となっておりますので、後日御社にもご連絡させて頂きたいと思います。よろしくお願い致します」

「えっ!あの・・・」

「それでは失礼致します」

相手に話す余地を与えず電話を切った。

やはり早いな。

社長はお子様達の運動会に父親として参加することで起こるべきことを予測され、その後の行動として指示されていた事だった。

西条優貴と気付かれれば、騒ぎになるであろうことだから。

まあメディアに出る時の風貌のまま運動会に向かわれたのだから、気付かれても当然なことで。

社長も隠すつもりはさらさら無く、むしろ公表するきっかけくらいにしか捉えていない。

自分の家族だと。

そこで自分もSNSで検索したところ、分かってはいたけど投稿されている画像や動画に驚いた。

確かに独身イケメン社長として世間に認知されている社長が、子供の手を引き走る姿や抱っこして女性に寄り添っていれば隠し子だと騒がれても仕方がない。

一般誌やネット記事なら、社長の顔は出しても清水さんやお子様達などの一般人の顔はモザイクかけたはず。

でも今回個人のSNSという事で、一切モザイクがかけられてない。

デスクに座っている社長の元に向かい、先程の電話内容と検索した写真や動画を見せると、「よく撮れているな」と呑気な様子。

「お子様達のお顔が出てしまって本当に大丈夫ですか?」

有名人のご家族は普通隠したがるものなのに、社長ときたらむしろそれでいいと言っている。

「大丈夫だ。むしろ今回は絵莉が妻で悠と凛が俺の子供だと知らしめる必要がある。いつか世間に悠と凛が俺と血が繋がってないと騒がれて傷付けられるくらいなら、先に明かして手出し出来ないようにする。俺の家族だ。絶対に3人を守る、その為にまず手の内を明かすんだ」

何の迷いも無い言葉に感嘆するが、目の前の社長は私のスマートフォンを手にしてネタ元の運動会の動画を眺めて口元を緩めている。