私の事を覚えていないんじゃない。 気づいてて、ワザと避けているんだ。 あからさまに逸らされた視線が全てを物語っている。 「みどりは食べてて」 えぐっちゃんの声がしてハッと我に返った。 ピシャリと閉められた扉に体の硬直が解けてヘナヘナと椅子に座り込む。 相当ショックを受けているみたい。 別人であって欲しいと思いながら、心のどこかでやっぱり期待していたのかも知れない。 私の知る龍司君はもうどこにもいないのだ。