十色スタッカート




あの頃の龍司君は良く笑う男の子だったのに。








「………」


教室に戻って5限が始まっても、龍司君はずっと借りて来たと思われる本を読んでて授業は上の空。

気になって私がチラチラ視線を飛ばしているのにそれすらも気付いていない。


いや、シカトされてる可能性もあるな…。



あの頃みたいに笑ったりしないんだなぁ。
龍司君の笑顔を見ると私はいつも元気を貰えていた。

ボロカスに負かされるドッジボールだったけど凄く楽しかった。





「赤根ぇ〜。なに堂々と違う本読んでんだよ」


突如背後から現れた数学の教師によって龍司君の本が奪われてしまった。

考え事をしていて背後の気配に気づかなかったのは彼も同じだろう。
本を奪われてかなり不機嫌に見える。