空の君に手をのばして

「そう。優杏ちゃん、看護師になったの」





















私もお墓に手を合わせた後、墓地の敷地内にあった休憩所の椅子に腰をおろした。
























「はい。すいません、ご挨拶に行けなくて」






















「良いのよ。忙しかったんでしょ?」






















颯斗のお母さんの優しいところ、十年経っても変わらないな。
























「空を見るとね、思い出すの。颯斗のこと」




















颯斗のお母さんと同じように、空を見上げる。

























限りなく青い空がどこまでも続いていた。
























「病室にいる時も何か考え事をしている時も、空を見ていたでしょ?だから、青空を見ると思い出すのよね」






















私も同じですよと言って、空をじっと見つめる。






















颯斗の声が今にも聞こえてきそうで、顔が少し綻ぶ。























「きっと、颯斗は空から私たちを見てくれています」























そう言いながら、私は十年前と同じように精いっぱい手を伸ばす。

























高く高く手を伸ばした。





















空の君に届くように。