颯斗が集中治療室に運ばれてから一週間。




















颯斗は目を覚まさないままだった。























「優杏ちゃん。はいこれ」























「あ、すいません」


















颯斗のお母さんが買ってきてくれたジュースを受け取った。























「颯斗ね、意識がなくなる前に言っていたの。絶対に病気を治してサッカー部に戻って優杏ちゃんを全国に連れて行くんだって」























颯斗のお母さんの話に必死に耳を傾ける。

























聞き逃してはいけない。





















絶対に聞かなければと思ったから。




























「あの子、本当にサッカーが好きなのね。病院のテレビ付けてもサッカーの試合ばかり見るんだもの」
























その言葉で颯斗の気持ちが分かったような気がした。
























違うよ、おばさん。
























颯斗はサッカーが好きだからサッカーの試合を見ていたわけじゃないよ。
























「颯斗はきっと忘れないために見ていたんだと思います」

























「え?」
























颯斗は病気のせいでサッカーを忘れてしまわないように、必死に覚えようとしていたんだ。
























だから、あの時サッカーのことは覚えていたんだね。

























颯斗にとって、サッカーはとても大切なものなんだ。





















「そうね。颯斗はサッカーがとても大切だものね」























「はい」


























私の話に、颯斗のお母さんは同意してくれた。






















目を閉じている颯斗の顔が少し緩んだ気がした。