点滴や酸素マスクを付けている姿の颯斗は初めてで、辛くて逃げてしまいたくなる。




















でも、逃げちゃダメ。




















颯斗の病気と最後まで向き合うって決めたんだ。















手にグッと力を込めて、私はガラスの向こうの颯斗を見つめる。




















呼吸をして、懸命に生きようとしているのが分かる。

























「颯斗。


















死なないよね」







か細い声で言っても、颯斗に聞こえないのは分かっている。


















だけど、何か颯斗に言わないと、と思っても声が上手く出ない。



























お願い。














声出てよ。



















「颯斗、私、待っているから」








頑張って声を出そうと思っても、やっぱり出なくて。

























「優杏ちゃん。


























辛いなら、泣いて良いのよ?」

























颯斗のお母さんにそう言われたけど、私は首を横に振った。






















「今、本当に辛いのは颯斗なんです。だから、私は泣きません。泣くのは颯斗が助かったその時だけです」
























そうだ。次に流す涙は嬉し涙だけ。





















そう決めたんだから。









「優杏ちゃん……」





















颯斗のお母さんの悲しそうな声に私は耳を貸すことなく、再び颯斗の方を向いた。

























私の声、聞こえているのかな?

























お願い颯斗、目を覚まして。



















両手を握って、颯斗をじっと見つめる。