病室に着くと、私は颯斗の手を握った。



























呼吸は安定しているみたいだけど、やっぱり目が覚めなかったら不安で仕方がない。


















「颯斗。


















目、覚めるよね」

















颯斗の頬をそっと撫でながら、私は呟く。


















「優杏……」

















「!颯斗!?」














颯斗の小さな声に反応した。






















聞き間違いじゃないよね!?




















今、私の名前呼んでくれたよね!?


















「っ……。



















ゆ、ず?」
















颯斗は目を覚まして、私の名前を呼んでくれた。
















嬉しくて、私はつい抱き着いてしまった。
















「ちょ、優杏、くるしっ」



















「あ、ごめん!」






















慌てて離れたら、颯斗はにこっと微笑んで優しい声で言った。






















「心配かけてごめんな、優杏」


















その優しくて暖かい言葉に、涙が無意識に流れた。



















本当に颯斗はずるいよ。


















だってこんなにも人をドキドキさせて、泣かせるんだから。
















「泣くなよ」



















そっと私の涙を拭いてくれる颯斗の手が愛おしくて、その手をギュッと握った。



















温かいよ、颯斗。



















大丈夫。



















あなたはちゃんと生きているよ。

















「颯斗。
















私、颯斗を絶対に死なせないからね。




















危なくなっても、私が助けるから」















医学の知識なんてまったくないけど、信じることは出来るから。




















颯斗の命が危なくなったら、何度でも、君の名前を呼ぶよ。


















「ああ。俺も生きる。絶対に死なない」




















「うん!」





















今日した遠い所に行くっていう約束。















絶対に果たそうね。


















その時には私の気持ちも伝えられるかな。






















「私たちがいること、まさか忘れていないでしょうね?」









































ビクッ
























そ、そうだ。みんながいたことうっかり忘れていた。



























「も、もちろん忘れていないよ!」























私は慌てて颯斗から離れてみんなに向き直るけど






























「ふうん?じゃあ、私たちがいることも分かっている上で、イチャイチャしていたんだ?」






























「べ、別にイチャイチャなんて」





























桃花のからかいに逃げ出したい気分だった。



































でも、ふと颯斗を見ると笑っていたから、それだけで何だか気持ちが落ち着いた気がした。