空の君に手をのばして

颯斗の病室に着いて、何故か桃花は先に来ていた春馬を連れて病室を出て行ってしまった。







狭い病室に颯斗と二人きりで、何だか恥ずかしい。







「え、えっと、颯斗は水族館とか興味ある?」









沈黙を破るように、私は早速本題に入った。














颯斗は少し口を閉ざした後、ゆっくりと口を開いた。














「そういえば行ったことないな。ちょっと行ってみたいかも」












その颯斗の返事に私は目を輝かせる。








「じゃあ、この前新しく出来た水族館に行かない!?










たくさんの魚が泳いでいるんだって!」













私は大喜びで水族館のチラシを見せた。












「二人、で?」













「へ?」













忘れてた。









そういえば桃花は一緒に行くともみんなで行こうとも言っていなかった。










これって、つまりどういうことなんだろう。










「た、多分、みんなで、かな?」





分からなくて、疑問形になってしまった。









もし二人なら、それは完全にデートなわけでつまり、颯斗と一日中ずっと二人きりなわけで。










もう何が何だか分からない。





















「俺、二人が良いな。優杏と出かけたことないし」


















そう言われて、さっきからバクバク言っている心臓の鼓動が更に大きくなる。


















































「良いんじゃないか。二人で行っても」



















答えに戸惑っていると、突然お医者さんの声が聞こえた。






















病室の入り口から、笑顔でお医者さんが入ってきた。














「先生。この前、外出許可もらったばかりだけど、出かけても良いですか?」

























颯斗はお医者さんに丁寧な口調で言った。


















この前渋々もらったばかりだしもらえないだろうと思っていたのに、お医者さんはあっさり引き受けた。




















「外の空気を吸うことも治療になるからね。楽しんでおいで」





















「ありがとうございます」






















颯斗はベッドの上で、お医者さんに頭を下げた。























私も慌てて、頭を下げる。






















緊張するけど、颯斗とのデート楽しみだな。