颯斗と私は一階にある喫茶店にやって来た。





さっき颯斗が指をさしたお店だ。








車椅子があるから一階のお店にしか行けないのが残念だけど、上の階にはほとんどお店がないから、十分に楽しめそう。







「いらっしゃいませ。二名様ですか?」








お店(教室)に入るなり、恐らくクラスで合わせて作ったのだろう制服を着た女の子が私たちを出迎えてくれた。






「あ、はい」









違和感を覚えたのは、その時だった。





「ではこちらへどうぞ」







その女の子に案内されて、私たちは教室の窓辺側の席へ座った。








「ご注文がお決まりでしたら、こちらの呼び鈴を鳴らしてください」











机には、お洒落なテーブルクロスが敷かれていて、その上に小さな呼び鈴とメニューが置いてあった。





「あの子、凄く丁寧だったな









優杏?」










「え、あーうん。そうだね」









颯斗の言葉も聞かずに、私は適当に返事をした。









この教室に入ってきて感じた違和感。
それは、みんなの態度だ。











普通すぎる。いくら颯斗が入院していて学校に来ていないからって、あれだけ人気だったのに、すぐにそれが落ちるわけがない。







店員さんは一年生だから颯斗のことを知らないにしても、お客さんで来ている二年生の中には颯斗のファンも多いはず。







それなのにどうして、みんな颯斗を見ても騒がないの?






前は颯斗が登校してくるだけでアイドルの出待ちかと思うくらい、騒がしかったのに。







「優杏。上の空だぞ。大丈夫か?」







颯斗に声をかけられて、ようやく我に返る。












「あ、ごめん。少しボーっとしていた。メニュー決めないとね!」








颯斗は気づいていないのかな、このみんなの異変に。







「俺、これにする」









颯斗が指をさしたのは、オムライスだった。このお店のおススメらしい。





「あ。美味しそう。私もそれにしようかな」








オムライスなんてもう何年も食べていないから、久しぶりに食べたくなったので颯斗と同じものを注文することにした。








呼び鈴を鳴らすと、すぐに店員がやってきた。








「オムライスがニ点ですね。以上でご注文よろしいですか?」






「はい」








さっきとは違う店員さんに注文をして、私はその店員さんが去って行った後颯斗に言った。








「あの、店員さん。凄く丁寧だったね!」











私がそう言うと、颯斗は少し顔をしかめた。






















「それ、さっき俺が言った」