「颯斗。どこに行きたい?」







しばらく歩いた頃、校内の見取り図を見ながら何やら考えている颯斗の顔を覗くようにして聞いてみた。






「うーん。ここ、行ってみたい」






少し、話しにくそうな颯斗はそう言いながら校内見取り図のあるお店を指さした。







そこは一年五組がやっている喫茶店だった。






「喫茶店?そこで良いの?」





颯斗と同じように、見取り図を見ながら言った。喫茶店を選ぶってちょっと意外かも。






「優杏が嫌なら他の所でも良いよ」






そう言う颯斗に私は慌てて答えた。






「べ、別に嫌って言っているわけじゃないよ!?ただ喫茶店を選ぶと思っていなかったから」






イタズラ好きな颯斗なら、怖がりの私をお化け屋敷とかに連れて行くかと思っていたのに。








平和に喫茶店なんて、何だか颯斗らしくない。って颯斗に失礼かな。








「まあ、体が動かせるならお化け屋敷に行って優杏の怖がっている顔見たかったんだけどさ」






ああ。やっぱりそのつもりだったんだ。








相変わらずイタズラが過ぎると言うか……究極のドエスと言うか。








「でも、この体だし。それに車椅子押しながらだと、優杏も歩きにくいだろ。暗い所だと余計に」







颯斗……。私のこと、考えてくれたんだね。嬉しい。






「でも、もしこの病気が治ったら超怖いお化け屋敷に連れて行って、夜眠れなくなるくらい怖がらしてやるから覚悟しとけよ」








颯斗のにやりと笑う顔に、私の背筋は凍り付く。













ど、どうか病気が治る時このことを忘れていますように!と、私は強く願った。