颯斗が病気になって早くも三か月が経とうとしていた。


お医者さんは、颯斗の病気の進行は早いけど颯斗自身の病気と闘う力もとても強いと言っていた。記憶を失ってまた取り戻すなんて、この病気では普通ありえないらしい。


「春馬。全国どうなったんだ?」


私、桃花、春馬と三人で颯斗の病室に来ていた。


記憶が戻った時に、サッカー部が全国に行ったことを颯斗に伝えたらとても喜んでくれた。


「それがさ……」


「え、まさかダメだったのか?」


春馬が少し顔を俯かせた。






これは春馬の作戦で、颯斗に仕掛けた小さなドッキリ。

もし、颯斗がサッカー部のことを聞いてきたら、ダメだった感じを出して驚かせようって。



桃花はその提案を最初は否定していたけど、今はノリノリでその作戦にのっている。







「なんと次の試合に勝てば、全国二位にまで勝ち進んだぜ!」


俯かせていた顔を上げて、春馬は嬉しそうに言った。



颯斗はそんな春馬を見て、瞬きを何度も繰り返していた。戸惑いが隠せないと言った感じだ。




「はあ。みんなでしょうもない嘘つくなよな」




その直後、颯斗はため息をつきながら言った。




「ごめんな、たまには騙してやろうかと思って」




春馬はまだ嬉しそうに言っている。そんな春馬を颯斗は、呆れを含んだ冷めた目で見ている。でも、何だか嬉しそうな顔をしている気がする。






「ま、春馬らしいけどさ」



「何で俺が作戦考えたって分かったんだ!?」







「俺、まだ春馬が作戦考えたなんて言っていないけど?」






「あ……」





春馬のその失敗に、みんな笑い出す。と、同時に桃花はため息。




みんな颯斗が病気ということを忘れているんじゃないかって言うくらい、騒いでいた。




でも、忘れたわけじゃない。颯斗が病気でいつ死んでしまうか分からないからこそ、今を楽しくしているんだ。颯斗が余生を楽しく幸せに生きれるように。




「そ、それよりさ!来週の土曜日と日曜日にさ、文化祭あるんだよ。颯斗、お前も参加しないか?」





春馬が、恥ずかしくなったのかみんなの笑いを遮るように言った。









すっかり忘れていたけど、来週末私たちの学校では文化祭が行われる。





「文化祭か。俺、入院中なのに出来るのかな」








「その日だけ、外出許可取れば大丈夫じゃないか?それに、今年はお前を客として招待しているからさ!」