翌日。
焼き立てのクッキーを持って、桃花たちと病院に向かった。
颯斗の病室が近づくと聞こえてきたのは、乃亜ちゃんの声だった。
「颯斗くんにとって、私は大切?」
ドクッ
乃亜ちゃんのその言葉に、思わず足を止めた。
横にいた2人も、足を止めた私に気づいたのか、足を止めてくれた。
「そうだな。乃亜は大切だな」
心臓をわし掴みされたような思いだった。
それが、偽りかもしれないと願いたいけど、本人の口から聞くとやっぱり辛い。
必死に帰りたい衝動を抑えた。
今回はただ会いに来たわけじゃない。
きちんと記憶を取り戻してもらうため。
そのために来たんだ。
「そっか。嬉しいなぁ」
ガタンッ
「いい加減にしてよね!」

