その乃亜って奴に颯斗くん取られたまま、忘れるつもりなの?」
忘れるなんてできない。
今だって、こんなに颯斗に会いたくて仕方ないんだ。罵倒されるって分かってるのに。
「良く
ない」
「だったら病院行こう!私も悔しいよ。乃亜に取られたままなんて」
桃花の気持ちが、私の肩を掴んでる手から痛いほど伝わってくる。
「うん。私、もう一度クッキー焼いて、試してみる」
今度は目の前で食べてもらうんだ。そうすればきっと、思い出してくれるかもしれない。
「分かった。明日迎えに来るから!」
手伝ってくれないの?なんて聞かなかった。
桃花はきっと、私だけで作ることに意味があると思ってるだろうから。

