「颯斗!」
校門の前で、座り込んでいる颯斗に声をかけると、彼はすぐに振り返ってくれた。
「優杏」
力ない声で私をそう呼んだ。
なんだか何かをとても怖がっているみたいだ。
「大丈夫……?」
颯斗の隣に座って、そう呼びかける。
「俺、いつも通っている通学路が分からなくなったんだ。知っている道のはずなのに、何だか急に知らない道に思えてきて。頭がパニックになって、どうすれば良いのか分からなくなった」
体を震わせながら、颯斗は言った。
道が分からない……?
そんなことって、あるの?
もう1年以上通っている道を突然忘れるなんて。
「おかしいよな。俺、一体どうしたんだよ」
颯斗が顔を俯かせて言った。
私はそんな颯斗に何も言うことが出来なかった。
颯斗が道を忘れた原因が分からなかったから、適当なことは言えなかった。
ねぇ、颯斗。
私はこのときどうするのが正解だったのかな。
私は恐怖に震える颯斗の体を、ただ必死に抑えていることしか出来なかった。

