「え?」
用具を拾いながら、小さな声で颯斗が言った。
ものすごく寂しそうな声だった。
「最近さ、おかしいんだ。箸が上手く持てなかったり、簡単な文字を忘れたり、廊下ですれ違った後輩の名前、なかなか思い出せなかったりする。俺、どうしたんだろうな」
「颯斗……」
確かに、最近お弁当を食べている時も、時々箸の持ち方が変だったりする。
他にも、後輩の名前を忘れたり、たまに練習に来てくれる先輩の名前を忘れたり。
「悪い。なんか空気重くなったよな」
颯斗はそう言って、さっき落とした用具を拾って、倉庫に向かって歩き出した。
「颯斗……」
歩く颯斗の背中を見ながら、私は小さく呟いた。
どうしてこの時、無理矢理にでも颯斗を病院に連れて行かなかったんだろう。
そうすれば、少しは変わっていたのかもしれないのに。

